ピクトグラム制作で情報デザイン,プログラミング,問題解決を学ぶ(授業実践事例)

  • 2021年8月13日
  • 2022年6月10日
  • 情報Ⅰ
2022年8月9,10日にmicro:bit実習事例について全国高校情報教育研究会全国大会で発表します.
micro:bit事例ページ
キミのミライ発見(河合塾)に掲載されました.
https://www.wakuwaku-catch.net/jirei21201
実教出版社から発信される情報誌に掲載されました(紹介している研究所ページへのリンク).
https://pictogramming.org/prc/?p=175

授業実践事例を共有します。

なおこの記事の内容は第14回全国高等学校情報教育研究会全国大会(大阪大会)で発表した内容と同様の内容です。参加申込をするとアーカイブ映像をご覧になれます。

大前提は「楽しむこと」です。

数年前より, 「主体的で対話的な学び」といったワードが繰り返し述べられています。生徒は普段の生活のなかで感じた楽しいことは, 日常的に友人と共有しているでしょう。授業者が提供すべき事柄は, 自ら学びたくなるような環境の提示でしょう。

授業者の役割は変わりつつあります。

従来は如何に分かりやすい説明をして知識を詰め込むかに焦点が当てられていた印象です(かなり偏った表現であることは自覚しています)。

近年求められることは, 生徒がその学問領域に興味を持ち, 自分たちで探究することが求められているでしょう。

たかだか2,3行で語ることの出来ないことですので語弊もありますが,「生徒が興味を持ち, 自ら問題解決する」環境を提供することを以前より重視されていると感じています。

2002年頃に最も騒がれたゆとり教育による学力低下云々の時期からやられていることですが, 内容や形を変え, 大学入試の形態が変わることを機にここ数年でようやく様々な改革がされたと感じています。

本記事で紹介する授業実践は, 生徒に興味を持ってもらうことを重視し, 生徒同士で学びを深めることを大前提として設計しています。授業者が全体に話す内容は少なくとも, 臨機応変なサポートが必要な設計です。

およそ5回分の授業で設計しています。

内容の一部の動画

まずこの動画をご覧になると良いと思います。2部構成で大雑把にピクトグラミングの使い方を説明しています。ただし, 重要なところはおさえています。またどのように授業展開するか, 少しイメージできると思います。

授業の内容(5回分)

ピクトグラミング導入

こんにちはピクさん

世の中にあるピクトグラムに目を向ける。人型ピクトグラムがずっと同じポーズをしているのは本当に可哀想であると話す。そして人型ピクトグラムを解放する。

この人をこれからピクさんと呼び, 一緒に遊ぶことにしましょう。

ピクトグラムとは

左の記号を海外の方に見せると, 何か分からないそう。ピザに見えたりするそう。2020年東京オリンピック開催決定した頃にこのピクトグラムに人が入った記号を温泉マークにすることになった。現在はどちらもJIS規格である。

ピクトグラムは意味するものの形状を使ってその意味概念を理解させる記号のことを言うが, 左のピクトグラムではそれを達成しきれていないことを認識する。

同時にマレーシアの駅にある「凧揚げ禁止」やタイの「優先席」のピクトグラムを紹介し, それが何を意味するか当てさせる。

日本の文化に慣れ親しんだ生徒に対して海外のピクトグラムを提示することで, 温泉のピクトグラムが分かりにくいことを認識させる。

個人の背景となる文化や視点が異なることで, 伝わると思っていることも伝わらないことがあることを認識する。

管理人
ここのポイントは視点を変えることだと思います。ピクトグラムに関して学習していますが, そのピクトグラムを見たときにその意味概念を理解できるかを考えます。このあと学習者はピクトグラムをデザインする側になります。その際に「すべての人に理解してもらう」ためには「様々な文化やそれぞれの人の学習に関する背景」を考慮する必要があります。そのために多種多様な視点に立つことを考える必要があると思います。
何気ない導入であり, 発言を促すだけで相当盛り上がる内容ですが, 授業者が「温泉を知らなかったら?」「マレーシアのピクトグラムだけど、マレーシアって何が有名だっけ?」など他者視点になることを促すと良いでしょう。

ピクトグラミングに触れる

いずれのピクトグラムも24時間ずっと同じポーズをとっていて大変ですので一緒に遊びましょう。

一斉にピクトグラミング(PCでPCブロック版)を開く。

表示されるピクトグラムを以後ピクさんと呼ぶことを述べる。これは筆者が呼びやすいからであって必須ではない。

「ピクトグラミングを開いたらピクさんの腕や脚をドラッグしてみましょう。」

ピクトグラミングは直感的に操作できるため, 単にポーズを作るのみならば説明は不要である。長々と説明するより, とにかくドラッグ操作をさせることが先決だろう。

管理人
非常口のピクトグラムデザインを決める際に, 「記号の人型を見て, 想起する人物と重ね合わせられるように(一部抜粋意訳)」といったことが考慮された。ピクトグラミングの設計指針によると, 操作する”人型ピクトグラム”は自分や友人等を重ね合わせて考えることが意識されている。これには非常に大きなメリットがある。その一部簡潔に述べると, 自分自身の身体構造(腕や脚の曲げ伸ばし程度)を重ね合わせることになるが, その身体動作は既に理解しており改めて学習し直す必要がない。新たなソフトウェアの使用方法を習得する際には使用方法に加え, そこで使用する概念を理解する必要がある。
ピクトグラミングの操作方法は(現段階では)ドラッグのみであり, 使用する概念は普段の人間の身体動作を触れるのみであるため, 導入時の負荷が非常に小さい。
初見で嫌悪感を抱くか, 興味を持つかは非常に重要であるだろう。興味を持ち, 楽しんだならば主体的に取り組むきっかけになるだろう。
管理人
学習者が作るピクトグラムのポーズを授業者が真似てみると盛り上がります。腕の角度を単に変更するのではなく, 人間の身体動作を結びつける意図もあります。

画像とアニメーションを作る

ピクトグラミングで左に表示されるピクさんを操作すると右側に操作履歴が表示される。右に表示されるブロックを「実行ボタンが押されたとき」の中に入れ, 回転命令のブロックの「0秒で」を「1秒で」に変えて実行ボタンを押下する。

この段階でアニメーション作品と単なるポーズの作品を制作できる。制作して完了。

情報デザイン基礎理論

インフォグラフィックスの説明, 色の知識, 色覚特性, ピクトグラムはISOやJISなどで規格化されている。

ピクトグラミングは, ISOに則ったピクトグラムを作成できるが, 色に関してはJISに則っている。これはJISで設定する色は色覚多様性に配慮した色に改定された内容に準拠している。

デザインを意識したピクトグラム制作

デザインという言葉の幅広さを説明する。デザインの過程が問題解決の過程に似ていることを示す。「とりあえず二次元画像を作成すること」をデザインと述べることがあるが, それとは違うことを明示する。

ピクトグラミングでは, 意図があって規格化されたISOやJIS規格を著しく逸脱しないピクトグラムを簡単に作成できることを示す。

すでにお遊び感覚でピクトグラム作成をしているが, この段階で, あらゆる人に伝わるピクトグラム作成をする。それが全員に伝わるかを他者視点に立って考えるよう促す。

デザインを意識して制作したピクトグラムの相互評価

GoogleスプレッドシートとGoogleフォームを使用した。

評価は

  1. 評価者は, 授業者が指定したピクトグラムを見る。
  2. そのピクトグラムのタイトルを入力する。
  3. 作者が指定したタイトルを見る。
  4. そのピクトグラムの良かったところ, 改善点を文章で入力する。
  5. 意味明瞭度と日常重要度を7件法で回答する。

以上のステップで3名分評価する。

意味明瞭度は ピクトグラムがどの程度わかりやすくその意味を表しているか。

7非常にわかりやすい
6かなりわかりやすい
5少しわかりやすい
4どちらでもない
3少しわかりにくい
2かなりわかりにくい
1非常にわかりにくい

日常重要度は 日常生活を送る上でどの程度重要か。

7非常に重要である
6かなり重要である
5少し重要である
4どちらでもない
3少し重要でない
2かなり重要ではない
1非常に重要ではない

指定の人を評価したら, 任意の作品を選択して同様の内容で評価する。

評価内容はリアルタイムに作者へフィードバックする。仕組みは別途紹介記事を作成予定である。

ポイントは, 自分自身への評価を誰がしたかを見られないような仕組みにしていること。

評価の分析

(このステップは改善の余地が大いにある。)

評価された内容から欠損値を除き基本統計量を求める。グラフ等を作成して分析や考察をレポートする。

このステップでは使用ソフトウェアを指定しないが, ほとんどがExcelとWordを使用した。

授業を終えて

ヒトの形を模したピクトグラムを使用することの良さを強く感じる。アイデアの発散のなかで学習者の文化が垣間見える。例えば好きなアイドルやヒーローなどのポーズを再現したり, 何かしらを表現するために自分自身の体を動かすことが散見された。

教科学習をする際の問題点は, その学習事項が学習者の文化から乖離していることを常々感じている。

「こんなこと学んで何の役に立つの?」という質問はその典型だろう。無論様々な反論がある。(あと少々論点がズレている)

何の役に立つかは, 授業展開次第でどれだけでも説明できるが, 学習者の文化から乖離しすぎているがゆえに, 興味を持たないことが最もよろしくない状況であると感じている。興味を持ち, 様々に試行錯誤する過程で教科情報の諸概念を習得することを目標として授業展開した。

プログラミング的な内容は言及していないが, この授業の過程では 逐次, 並行実行を学習している。

情報Ⅰの内容は4つの柱がある。

問題解決、情報デザイン、プログラミング、データ活用。

現在目に見える部分だけでも 問題解決とデザイン, プログラミングのそれぞれの一部が同時に体験できている状況である。

4つの大きな区分けがそれぞれ別のものとして学習されることは, 望ましくないと考えている。

それを打破する一つに, ピクトグラムを活用した。

記事編集について

取り急ぎ思い浮かんだ言葉を並べたような記事である。以後時間をかけて少しずつ良くする予定である。